宅配業者のお兄さんは前腕の血管が誰より浮き出ているので――フェチがバレたらなぜか激愛で囲い込まれました
 それから、三日が過ぎた。
 朝、リュックを背負い家を出て、スポーツタイプのミニベロロードにまたがる。この自転車は私の愛車で、通勤手段だ。

 ヘルメットを装着し、職場である事務所を目指す。
 といっても、都内の電車で二駅分だ。そんなに遠い距離じゃない。

 今日もいつものように出発し、車に気をつけて公道を走る。

 ――ガコン!

 歩道に乗り上げた時、突然車輪から鈍い音がした。ペダルが空回りし、愛車ごと体が右に傾いてゆく。
 あ、と思った時には、愛車は倒れていた。巻き込まれまいと咄嗟に避けたが、私も尻もちをついてしまう。

「イテテ……」

 腰をさすりながら顔を上げると、道行く人たちがこちらを見ていた。

 恥ずかしい。この歳になって、自転車で転ぶなんて。

 私は急いで立ち上がり、こちらを注視していた人たちに〝大丈夫です〟の意味を込めて小さく頭を下げる。
 それから自転車を起こし、ガードレールに立てかけた。

 ため息とともに自転車の横にしゃがみ、ペタル部分を見る。
 いつもはピンと張っているチェーンが、だらんと垂れていた。歩道に乗り上げた時に、外れてしまったのだろう。

 とほほ。今はとりあえず、自転車を押して職場まで向かおう。

 くよくよしていても仕方ないと、気合を入れて立ち上がろうとした、その時だった。

「舞園さん、ですよね。大丈夫ですか?」

 どきりとした。
 聞き覚えのある、低く爽やかな声色。振り返ると、こちらを心配そうに見下ろす男性がいた。

「唐木さん……」

 彼はいつもの宅配便のユニフォーム姿で、後方にはトラックが駐車してある。

「倒れたの見えたから。怪我はないですか?」

 そう言う彼はいつもの爽やかな笑顔ではなく、切なく苦しそうな顔を私に向ける。

 私は慌てて視線を落とした。申し訳ないし、恥ずかしい。
 彼はトラックをわざわざ停めて、駆けつけてくれたのだろう。

「はい、大丈夫です」

 立ち上がるタイミングをなくした私は、視線を落としたまま、まごまごと答えた。

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