宅配業者のお兄さんは前腕の血管が誰より浮き出ているので――フェチがバレたらなぜか激愛で囲い込まれました
「ふう」

 彼は一息つくと、ペダルを手でくるくる回す。

 ペダルに連動し、後輪が動く。チェーンはきちんと絡まり、動いていた。
 だけど私はつい、彼がペダルを握る手……から繋がる前腕に、釘付けになってしまう。

 ペダルを握る手の甲に浮き出た静脈の線が肘の内側へと向かって伸びている。
 まるで、芸術品のように。

「直りましたよ」

 唐木さんが突然こちらを振り向く。
 私は夢中になっていた視線を慌てて彼の顔に戻し、口を開いた。

「ありがとうございます、助かりました」

 そして素敵な前腕とほとばしる静脈をありがとうございます、命が助かりました!

 心の内で彼の前腕を拝むように両手を合わせる。
 笑みを向けると、彼はにこっと笑ってくれた。

「では、これで」

 彼は立ち上がり、制帽のつばに軽く手を当て会釈する。

「すみません、お仕事の途中だったのに」

「いえ、とんでもない。あなたを助けられて、よかった」

 え、なに、今の――。

 唐木さんの言葉に、胸がどくりと鳴る。
 まるで私を助けたかったみたいじゃないか。

 いやいや、そんなはずはない。
 唐木さんは優しいから、困っている人がいたら助けたいと思うのだろう。きっと、私もそのひとりにすぎない。

 そんなことを思っている間に、彼はトラックに乗り込み行ってしまった。

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