宅配業者のお兄さんは前腕の血管が誰より浮き出ているので――フェチがバレたらなぜか激愛で囲い込まれました
 一週間後。

「こんにちは!」

 今日も爽やかな声が聞こえて、私の心はソワソワと騒ぎ出す。
 というのも、この間のお礼に唐木さんに渡そうと、手作りのクッキーを持ってきているからだ。

 お菓子作りは私の趣味だ。唐木さんが今日荷物を届けに来るのを知っていたから、昨日のうちに焼いてラッピングしたのだ。

 喜んでくれるだろうか。人がつくったものが苦手なタイプだったらどうしよう。

 今さら考えても仕方のないことをつい考えてしまい、私はふるふると首を横に振った。
 それから、クッキーを入れた紙袋を手に立ち上がる。

「こんにちは、いつもありがとうございます」

 彼のほうへ向かいながらそう口にして、あれ、と疑問が浮かんだ。

 いつもと同じ、爽やかな笑顔を浮かべる彼の腕。いつも覗いている前腕が、見えない。
 彼の制服が、長袖だったのだ。

 私の楽園……どこ?

 その場に立ち尽くしていると、その間に唐木さんは前回と同じようにコピー機の横に段ボールを運んでくれた。

「ここに置きますね」

 そう言ってこちらに笑みを向ける彼はいつも通りだ。
 だからこそ余計に、長袖な彼に違和感を覚えてしまう。

「唐木さん、あの……」

「サインレスになったんで、これで。またよろしくお願いします」

 私がなにかをいう前に、彼は私の横を通り過ぎてゆく。そしてそのまま、入口のガラス戸を出て行った。

 その扉が閉まるのを呆然と見つめていたが、閉まりきる音ではっとした。
 クッキー、まだ渡してない!

「すみません、ちょっと早いですがランチ出てきます!」

 私は慌てて彼を追い、事務所を飛び出した。

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