ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「ですが、今日は弟の縁談なのでしょう。俺には関係のないことです」

今にも帰りたそうにしている彼に、ご当主は眼差しを鋭くする。

「違う。お前の縁談だ。康惺(こうせい)

その瞬間、客間にいたご当主以外の全員が、間抜けな顔をして目を見開いた。

「は……? なにをおっしゃっているんです?」

惺也さんがご当主にすがるように腰を浮かせる。

「何度も言わせるでない、木偶の坊が。嫁をもらうのは兄の方だと言っている」

場を沈黙が支配する。呆然とする父、愕然とする惺也さん、わけもわからず硬直する私。

ただひとり彼――康惺さんだけが研ぎ澄まされた目でご当主を睨み続けている。

「康惺。貴様、また縁談を流しただろう」

康惺さんが面倒臭そうに前髪をかきあげた。図星だったのだろう、視線を逸らして息をつく。

「どれだけ相手を見繕っても結婚しようとしない。この愚か者め。いい加減、女を娶って跡を継げ」

「……待ってください」

割って入ったのは惺也さんだ、蒼白になりながらもテーブルに身を乗り出してご当主に詰め寄る。

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