ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
それだけじゃない。きっと息子のことも〝跡取りとそれ以外〟くらいにしか認識していないのだろう。

この人の頭の中には、愛し合うとか添い遂げるとか、そんなロマンティックな発想はないのだ。

静観していた康惺さんが短く息をつき、脚を崩した。

「弟に跡を継がせてやればいいじゃありませんか。俺よりもずっとやる気がある。彼女も、俺よりも弟の方がずっと似合いですよ」

気だるい眼差しがこちらを向く。

どうやらこの人も婚約者の挿げ替えには反対のよう。それどころか、惺也さんの言う通り、跡を継ぐ気もないらしい。

底知れない瞳からは〝関わるつもりはない〟、そんな意思だけが伝わってきた。

しかし、ご当主は拒絶するように瞼を閉じる。

「無能な弟に家は任せられん」

……また無能なんて!

言い返したくなって、きゅっと奥歯をかみしめる。

ダメだ、なにも言っちゃいけない。ここで私が生意気を言ったら、きっとこの縁談は破談になる。そうしたら父の会社は後ろ盾をなくして潰れてしまう。

悔しいけれど、主導権はすべてこの冷酷なご当主が握っている。

「まあいい」

これ以上時間を割くつもりはないのか、ご当主がゆっくりと立ち上がる。

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