ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「売れ残りだなんておっしゃらないでください。私はそんなつもりでお断りしたわけではないのです」

康惺さんが私の腰に手を回す。不意に顔をあげると、困ったように笑う素の彼がいた。

「すべての縁談をお断りしていました。この歳になるまで、ずっと結婚するつもりがなかったのです。……彼女に出会うまでは」

腰に回った手にきゅっと力がこもる。

その言葉は会長に対する弁解なのだろうか。それとも――。

「よい伴侶と巡り会えたことを、心から祝福するよ」

会長は棘のない口調でそう告げ、静かに頷く。

「それにしても若々しいのに気品があって美しい方だ。康惺くんとよく似合っている」

康惺さんは謙遜するかと思いきや、「そうでしょう」と誇らしげだ。

私は「もったいないお言葉です」と会釈をする。

「どうだ、ふたりでダンスでも一曲踊ってみては。会場がとても華やぐと思うんだが」

唐突な申し入れに、笑顔のまま凍りつく。応えたいのはやまやまだが、ダンスなんて踊れるわけがない。

さすがに康惺さんも驚いたような顔をしている。どうかわしてくれるだろう、返答を期待していると。

「せっかくだから踊ってみるか?」

< 125 / 257 >

この作品をシェア

pagetop