ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
こんな行き当たりばったりな状況は二度とごめんだ。細く深く息を吐き出し、胸を撫で下ろしていると。

「お疲れ様。素晴らしかったよ」

うしろから拍手と、聞き覚えのある男性の声。どこか康惺さんと似た質感だけど、柔らかく人のよさそうなこの声は――。

「惺也。来ていたのか」

康惺さんの驚く声に弾かれて振り向く。

そこにいたのはチョコレートブラウンのパーティースーツに身を包み、髪を凛々しく後ろに撫でつけた惺也さんだった。ノンフレームの眼鏡がよく似合っている。

「涼羽さん、お久しぶりです。そのドレス、とてもよくお似合いですよ」

「お久しぶりです。惺也さんもよくお似合いで」

「ありがとうございます」

にっこりと笑ったあと、康惺さんに向き直る。

「こっちのフロアは兄さんが挨拶周りをしてくれているようだったから、僕はサロンの方に顔を見せてきたよ」

笑顔はそのままで、でも声のトーンは少しだけ低くなった。私が知らない惺也さんの口調だ。

私はひとりっ子だからよくわからないけれど、きっと兄弟らしいやり取りなのだろうと思う。

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