ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「そうだな。涼羽を部屋に送り届けたら、俺も――」
そのとき、すぐ背後から「舘華……?」と彼の名を呟く声が聞こえた。
そこにいたのは康惺さんと同じくらいの歳の、ポケットから鮮やかな紫のチーフを覗かせる小洒落た印象の男性だ。
まだ挨拶していないことを考えると、このフロアにやってきたばかりなのかもしれない。
「丹波か。久しぶりだな」
懐かしい顔だったのか、康惺さんの声に喜びがにじむ。
「誰かしら会えると思っていたんだが……そうか、お前は舘華興産の跡継ぎだもんな。ここにいても不思議じゃない」
男性は納得したように頷く。
康惺さんが私に「彼は丹波孝一。俺の大学の同窓だ」と手短に説明してくれる。
丹波さんは私の顔を見て「彼女は恋人か? まさか――」と目を丸くして言葉に詰まった。
「紹介する。妻の涼羽だ。今春、結婚した」
「結婚……!? お前がか!?」
こういうリアクションは今日何回目だろう。康惺さんの結婚はそんなにも意外なのだろうか。
私は「妻の涼羽です。ご挨拶できて光栄です」と当たり障りのない挨拶をしておく。