ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
ふたり、ベンチに並んで座ったまま、若干気まずい沈黙が落ちる。

目の前には広々とした夜の庭園。ぽつぽつとライトが灯っていて、照らされた草花が綺麗だがどこかもの悲しい。

「少しだけ、兄が羨ましかったんです」

驚いて隣を見ると、惺也さんが眉を下げて微笑んでいた。

「本当は、涼羽さんの隣に立つのは僕だったかもしれない。今さらみっともないお話ですが。僕、割と結婚に乗り気だったんですよ」

膝の上の手をきゅっと握り込む。

私だって、そうだった。この人と一生をともにするのだと覚悟を決めていた。

なのにあっさりと挿げ替えられ、私の夫は康惺さんになった。

……でも、今でこそ私は康惺さんと結婚したことを後悔していない。

それは康惺さんが、婚約者を挿げ替えられた不条理をかき消すほど強い魅力を持っている人だったから。

惺也さんだけが今もまだ、あの不条理の中にひとり取り残されている。そう思うと胸が詰まった。

「兄とは踊りやすかったですか?」

不意に尋ねられ、返答に迷う。

「……リードしていただきました」

「あの人、器用ですもんね。昔からなんでも卒なくこなしてしまう」

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