ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
口調の中にはっきりと不快の色が混じっていて息苦しくなる。

……康惺さん、怒ってる?

もしかしたら、この状況を誤解しているのかもしれない。

慌てて「あの、違うんです!」と彼の背中に縋りついた。

「惺也さん、怪我をされてて」

「怪我?」

「その、右足を! さっき、ダンス中に私が踏んづけてしまって。細い踵で思いっきり」

「ダンス中?」

余計なことを口走ってしまったと気づいたときにはすでに遅く。康惺さんが眉をひそめて振り向く。

「涼羽さんに一曲、ご一緒してもらったんだ。僕にはパートナーがいなかったから、代わりにね」

惺也さんが笑顔で補足してくれたものの、なんのフォローにもなっておらず、険悪な空気が流れる。

康惺さんがふうと息をつく。気を抜いたというより、胸の内にある感情を鎮めるための呼吸に見えた。

「手を貸すか?」

怪我と聞いたからか、康惺さんが幾分か落ち着いた声で手を差し出す。

「いや。問題ないよ。歩けないほどじゃないし、そろそろ迎えが来る」

「そうか」

短く答えると踵を返し、私の腰を抱く。妙に強く引き寄せられ、ドキリと心臓が鼓動を刻む。

「いくぞ」

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