ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「意欲がある者がやればいいと思っています。経営はあらかたテンプレ化されていますから。私がやろうが弟がやろうが、大差はありませんよ」

適当に返事をすると、思うところがあったのか、茂木野社長は静かに酒器を口もとに運んで息をついた。

「……自分が社長をやっているからでしょうか、やはり向き不向きというものがあるように感じます。短い時間ですが、私は康惺殿にその才を感じました」

ぼんやりと茂木野社長の言葉を聞く。社長という立場に長く就くからこそ、わかるものがあるのだろう。

――なぜ惺也と差がついたのか。持って生まれた資質だったとしたら、神様ってやつはなんて性格が悪いのか。

「娘が嫁いだから言っているわけではないんです。適材適所を考えるのならば、やはり康惺殿、あなたが家業を継ぐべきだ」

懐からライターを取り出す。惺也が初任給の記念にくれたものだ。

俺を兄として好いているわけでは決してない。

あいつは幼い頃から俺と比べられて生きてきた。恨みや妬みこそあれ、慕う気持ちなど微塵もないだろう。

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