ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
毅然としてそう言い放つ。

強引だったとはいえ乱暴をしたつもりはない。彼女が痛い思いをしないように最大限、気をつけてはいた。

もしも涙でも見せようものなら、すぐに引くつもりだった。

ただ彼女は気が強いから、素直に泣くこともできないのではと心配だった。大丈夫そうで、とにかく安心した。

「シャワーを浴びるなら先に行け」

「そう、します……」

自身の頬と髪に触れ、夕べのままだと思い出したようだ。彼女は足もとにあるドレスを抱えてそそくさとシャワールームに向かう。

顔を背けて彼女が立ち去るまでじっと待つ。

「あの」

声をかけられて振り向くと、バスルームの手前のサニタリールームから彼女がひょっこりと顔だけ覗かせていた。

「もし気にされてるんでしたら、お詫びのつもりでひとつ、お願いを聞いてもらえませんか?」

「なんだ」

「ダンスを教えてほしくて。次にこういう状況になったときに困りたくないので」

思ってもみない頼まれごとに目を丸くする。うまく踊れなかったことを気にしていたか。

「あんなもの、その場で適当に合わせればいい。わざわざ練習するものじゃないぞ?」

「でも康惺さんは踊れるじゃありませんか」

「幼い頃に仕込まれたのを、ぼんやり覚えているだけだ」

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