ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
彼女の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でると、「ひゃあっ」という色気もへったくれもない声があがった。

「ちゃんと前見てください!」

「見てるよ」

くだらないやり取りを交わしながら、俺たちはペントハウスに向けて車を走らせた。



十二月も中旬に差し掛かり、ルーフバルコニーでの喫煙がつらくなってきた。

昨夜も彼女と愛し合ったあとバルコニーに出たが、上着を羽織ったとしても長居できる気温ではなかった。

冷え切った体でベッドに入り、彼女に冷たい思いをさせるのも気が引けて、一本吸ったところで切り上げた。せめて三本は吸わせてほしかった。不完全燃焼だ。

次からは喫煙用にダウンジャケットを用意しておこう。

そんな経緯があって寝つきがイマイチなこの日。

専務応接室で迎えたのは、資産家であり『みなも銀行』の元常務・山崎(やまざき)氏だ。

御年七十二歳。古くから舘華興産の資金繰りを支えてきた人で、とにかく顔が広い。

トラブルがあればまず彼にお伺いを立てる、そういう立場の人物だ。

「先週末は箕山さんのところに行ったそうじゃないか」

振るう権力とは裏腹に、本人は朗らかなおじいちゃんといった印象だ。

< 167 / 257 >

この作品をシェア

pagetop