ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「いや、本来お前の仕事じゃないんだから無理もない。報告をくれて助かった。まだ手の回しようがある」

今からでも計画を止めに入るか――そんなことを考えていると、野口が手もとのタブレットを閉じた。

「また本部長のフォローに回るのですか?」

本部長とは惺也のことだ。珍しく棘のある言い方をされ、俺は考えを止めた。

「僭越ながら、あまり教育によろしくないかと。自身で責任を取らず、兄が尻拭いをするのは」

普段はイエスマンである野口の苦言。よほど見過ごせなかったのだろう。

しかし、俺が黙ったままであることに怯えたのか、すぐさま「すみません。出過ぎたことを言いました」と発言を訂正した。

「いや。かまわない。……過保護に見えるか?」

「過保護というより……私だったら、そうされたくないなと」

「野口は、兄弟はいるのか?」

「ええ。出来のいい兄がひとり」

「なるほどな」

当事者の視点なだけに身に染みる。俺は大きく息をついて、執務チェアに深くもたれた。

「なんで惺也にはこの流れが視えないんだろうな……」

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