ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
彼がキッチンに向かい、カウンター越しに尋ねてくる。

「で、お嬢さんはなにを飲む? ジュースか? それとも、カフェラテとかココアとか、そういう方がいい?」

……やっぱりなんか小バカにされてる。

そもそもこの家にそんな甘ったるい飲み物があるのだろうか。興味本位で聞いてみたい気もするけれど、乗せられたら負けなので「結構です」と言い切った。

「それより。私は婚姻届にサインをするために呼ばれたはずですが」

本題を切り出すと、彼は値踏みするようにこちらを見つめ、「はいはい」と笑みを浮かべた。

飾り棚の引き出しから紙とペンを取り出してくる。

私はダイニングテーブルに座り、その用紙――婚姻届に署名をした。

この瞬間に私の人生が決まると考えると、感慨深いようであっけなくもある。

……それにしても、わざわざこのためだけに私を呼び出したの? 郵送でいいのでは?

首を傾げていると、彼がテーブルに肘をついて穏やかに切り出した。

「わざわざ呼び出したのは、直接あんたの反応を見たかったからだ。相手の表情、仕草、呼吸のタイミング、それらからしか測れない本音がある」

< 18 / 257 >

この作品をシェア

pagetop