ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「兄さんなら本当は、涼羽さんを自由にすることもできたんでしょう? これまでどんなときだって、面倒事をうまくかわしてきたじゃないか」

惺也の言う通りだ。涼羽を自由にしてやることもできた。

だが俺は――俺たちはそれを望まなかった。

「涼羽を手放すつもりはない」

惺也が玄関の前でぴたりと足を止める。振り返った表情には、はっきりとした怒りと憎しみが浮かんでいた。

「家督はいらない、嫁はいらない、そう謙虚なことを言っておきながら、結局おいしいところをすべて持っていく。兄さんはそういう人だ」

そんなことはない――とは言えなかった。惺也から見れば、俺は質の悪い強欲な男にしか見えないだろう。

「だったら早く俺を蹴落とすことだ。仕事で成果を出してくれれば、諸手を上げて跡継ぎの地位を譲る」

玄関を出た俺は操作パネルを解錠し、一階に向かうためのエレベーターを呼ぶ。

そのうしろで惺也は「よく言うよ」と不満をあらわにした。

「都市開発の件、白嶺の名前を出して邪魔をするのも、俺への当てつけだろう」

突然仕事の話を蒸し返されて、目を剥く。

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