ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
父が資料を受け取り、ページをめくる。数枚目を通したところで、眉間に深い皺が刻まれた。

「お言葉ですが、この一帯に手をつけようものなら、白嶺が黙っていないのでは」

「織り込み済みです」

そう言ってバッグの中から、別の資料を取り出す。先ほどの資料とは対照的で、細かな文字がびっしりと並んだ、いかにも実務的な書類だった。

「すでに白嶺の関係者と内々に話を進め、相互利益を保証する形に取り纏めてあります。こちらが草案です」

書類の最後のページには署名欄。だが記載はない。話の通り、締結前の契約書らしかった。

「この件、康惺殿はなんとおっしゃっていますか?」

「兄は関係ありません」

惺也さんが少々ムッとした様子で答える。

ひとつ咳払いをすると気を取り直したのか微笑んで、高らかに宣言した。

「これは僕が新しく設立した企業で扱う事業です。舘華興産を辞めて独立しようと考えています」

私も父もぎょっとして顔を見合わせる。とくに父は即座に問題点を見抜き「待ってください」と語気を強めた。

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