ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
「兄は失脚します。舘華興産も多大なる損害を受ける。これが証拠です」

そう言ってバッグから取り出したのは、折りたたまれた一枚の紙切れだった。なにかをコピーしたもののようで、広げた父が目を細める。

「入金記録……?」

「山崎という資産家から、兄名義のペーパーカンパニーに不正な資金が流れています。目的は利益供与か、資金洗浄か……とにかく、これが明るみに出れば兄はもちろん、舘華興産もただでは済まない」

ぎゅっと膝の上の手を握る。康惺さんが不正な取引を?

そんなはずはない、信じたくない、そんな気持ちで胸がじくじくと痛む。

「……少々曖昧では。この証拠だけでは不正資金と断言できないかと」

「調べればわかることです。情報はすでにリークしてあります」

そこまでするということは、これが不正の証拠だという確証があるのだろうか。

『ふたりで兄を失脚させる』――以前、惺也さんが口にした恐ろしい提案を思い出す。

あのときは冗談とも本気ともつかない様子だったが。

……惺也さんは本気で実の兄を失脚させようとしているんだ。

ぞっと背筋に冷たい汗が流れる。

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