ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
私の手もとを見つめながら、康惺さんがぽつりとこぼす。すぐに昼間のことだと気がついた。

「不安になんてなっていません。信じていましたから」

むしろ、ぐらついた自分の心の弱さが恥ずかしい。目の前の彼を見ていれば、おのずと答えは出たはずなのに。

「念のため言っておくが、女を囲ってもないからな」

「わかっています」

思わず苦笑してしまう。秘書に手を出したとか、高級クラブにお金をつぎ込んだとか、それらの噂も惺也さんが私を揺さぶるためについた嘘だったのだろう。

「そういえば親父殿から聞いたんだが――」

親父殿――うちの父のことだろうか。ふと思い出したように康惺さんが切り出す。

「涼羽は、俺が不正をしていると思うかと尋ねられたとき、潔白とは言えないって答えたんだってな」

鍋に入れようとしていた小松菜が、ぼとりと調理台に落ちる。慌てて入れ直してごまかした。

「いや、そこまで露骨に言ってませんけど?」

「もし俺が不正をしていたなら、自分も一緒に責任を取るって息巻いてたそうじゃないか。そりゃ嬉しいけどな。でも、そこは『不正なんてするわけがない』って断言するところじゃないのか?」

「……康惺さんの日頃の行いがよければ、悩まなかったんですけどね」

スッと目を逸らして弁解する。彼は「まったく」と嘆かわしそうに息をついた。

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