ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
第二章 ハイエンドな彼
「舘華康惺? 知ってる知ってる。この業界じゃ有名人よね。やり手でイケメン、超ハイスペックなのに結婚しない、未婚の女性たちの憧れで希望の星――だった人」
そう頬を引きつらせて語ったのは、社長である父の第一秘書を務め、私の教育係を任されている森川奏さん、四十三歳。父が全幅の信頼を置いている優秀な女性である。
ちなみに『だった』と過去形なのは、その希望の星がこの度、私と結婚したからだ。
まさか、女性たちからアイドル扱いされている人とも知らず、軽率に話題を振ってしまった自分を呪った。
「羨ましい。そんな人と結婚だなんて、羨ましい。ただでさえ売れ残ってるっていうのに、若い子の方からどんどん掃けていくなんて、ああこの世の理が恨めしい」
「……すみません」
本気で妬むような人ではないと知りつつも、つい謝罪する。
森川さんは「いいのよ、己の巡り合わせの悪さを嘆いているだけだから」と自嘲気味に呟いてお弁当を食ベ進めた。
ここは父が経営する茂木野不動産の食堂兼休憩所。
十二時現在、第一秘書の彼女と、第三秘書というか秘書見習いの私が休憩中。