ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
もっと悪あがきをすると予想していたので驚いたが、おかげで交渉が進めやすくて助かった。

「でも兄さんはこんな状況でもうまく立ち回っていたね。僕が法的責任を問われないように周りを言いくるめ、経営権を狙っているやつらにはあらかじめ別の見返りを用意してた。恐れ入るよ」

こうなることは予想していて、多少根回しをしておいたのだが。すべて功を奏して丸く収まった。

とはいえ、こんなヘビーな尻拭いはもう二度とごめんだ。

「今日はさすがに兄さんの偉大さが身に染みた。僕にこれを収める力はないよ」

「お前の島流しは免れなかったけどな」

「クビにならなかったのが奇跡だろう。それに、未開の地でゼロから再出発なんておもしろそうじゃないか」

意外にも左遷を好意的に受け止めたらしい。惺也が嬉々として言う。

「少なくとも、今みたいに兄さんと比べられることもなくなる」

ああ、と廊下を歩きながら窓の外に視線を逃がした。

惺也には誰にも比べられずに自分を表現できる環境が必要だったのかもしれない。

「父さんを経営の座から下ろしたのも作戦だった?」

親父には騒動の責任を取らせる形で代表を退いてもらった。

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