ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
ぱちりと大きく目を瞬く。『唯一の息抜き』とまで言っていたのに、迷わず私たちを選んでくれたんだ。

「無理、しないでくださいね」

やると決めたら揺るがない彼のことだから前言撤回はしないだろうけれど、ストレスがたまらないか心配だ。

苦笑する私をよそに、彼は盛大に眉間に皺を寄せた。

「あんたこそ、なにナチュラルに喫煙者の隣に来てんだよ」

「屋外ですし、そこまで煙が来るわけでは――」

「来るだろ! あー、シャワー浴びてくる。涼羽も早く室内に戻れ。風邪を引いたら大変だ」

そう言ってそそくさとリビングに戻っていく。私に一切触れないのは、煙草の匂いが移るのを気にしてのことだろう。

ふと彼が足を止めて振り向く。

「おめでとう……いや、違うな。他人行儀か」

そう言い直すと、目もとを緩めて穏やかな笑みを浮かべた。

「ありがとう、涼羽」

胸がふんわりと温かくなる。そのひと言から、彼が妊娠を祝福してくれているのだと伝わってくる。

「どういたしまして」

掃き出し窓を開けて、彼が手招く。私がパタパタとサンダルを鳴らして駆け寄ると、「走るな、転ぶだろ」とさっそく心配性を覗かせた。

きっと子煩悩になるに違いない、赤ちゃん相手に右往左往させられる彼の姿が、今から目に浮かぶようだった。






< 248 / 257 >

この作品をシェア

pagetop