ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
立ち居振る舞いは大企業の役員としても紳士としても申し分ない。女性たちの魂を引っこ抜くような秀麗なスマイルまで見せてくれている。

仕事がデキる人だとわかってはいたが、ここまで完璧に立ち回るとは。

ルーフバルコニーで『内緒な』なんて言いながら煙草を吸っているあの姿を、今、呆然と見蕩れている彼らに見せてやりたい。

「本日はよろしくお願いします。同席するのは秘書の蛯原(えびはら)と、今後提携の窓口になる弊社経営室所属の野口(のぐち)です」

秘書の蛯原さんはおそらく三十歳前後、フェミニンなレディススーツを着こなす優雅な雰囲気の女性だ。

野口さんは康惺さんと同世代くらいの真面目そうな男性。ふたりと挨拶を交わし、名刺を交換する。

「お会いできて光栄です」

そう言って艶っぽい笑みで名刺を差し出してきたのは蛯原さんだ。

「第三秘書の茂木野涼羽です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

仕事中は旧姓を使っている。名刺を交換しながら名前を告げると、きっと名字から社長の娘だと察しをつけたのだろう、彼女は「そう。あなたが」と納得したように呟いて、いっそうにこやかな笑みを浮かべた。

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