ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
握手を求められ、快く手を握り返すと。

――痛っ!

思いっきり手を握り返されたものだから、笑みを貼り付けたまま凍りつく。

彼女の表情はというと、艶やかな秘書スマイル。悪意の欠片も見られない。

……気のせい、かな……?

そんなわけないと思いつつも、できれば気のせいであってほしい。無理やり納得して手を解く。

私と彼女の間で起こった小さな異変には誰も気づかず、挨拶は滞りなく進んでいく。

「契約書についても拝見させていただきました。非常にありがたい内容で――」

父がそう言ってソファに座るよう促すと、康惺さんは「いえ」と断って話を進めた。

「時間が惜しい。まずは現場レベルで業務環境を拝見させてください。詳細はそのあとで」

導入の世間話すらショートカットする合理主義ぶり。

父を含め、役員たちは少々戸惑いながらも彼らをオフィスへ案内する。

舘華興産の三名と、父を含めた茂木野不動産の役員がぞろぞろとオフィスを練り歩く。そのうしろを私と森川さんがついていく。ちなみに額田さんは電話対応等があるため秘書室待機だ。

開発事業部と法人営業部のあるフロアを悠然と眺め歩く康惺さん。

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