ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
彼が好きとか、執着しているとか、そういうんじゃないけれど。なにもなかったことにはできない気がしている。

「容赦のつもりか知りませんけど、もう覚悟は決まっているので」

康惺さんが感情のない目で私を見る。

私がなんて答えたら満足なのだろう、相変わらず心の奥底が読めない人だ。

「まあ、康惺さんがどうしても別れてくれって頭を下げるなら、離婚して差し上げますけど?」

ちょっとだけ高飛車に提案してみると、彼はふっと息を吐いて表情を緩めた。

「あんたが覚悟を決めたんなら、俺も腹を括るしかないなァ」

気だるく言い放ち、こちらに顔を寄せたあと。

なんだろう?と顔を上げた私を迎えるように唇を寄せる。

わずかに触れ合って、隙間からほんのり苦い香りが流れ込んできた。

……そういえば、唇へのキスは初めてされた気がする。

なに食わぬ表情で顔を離し、リビングに戻っていく彼。

反対に私は今さらながら顔が熱く火照ってきた。

これまでもっと過激な場所にキス以上のことをされているはずなのに、ただ唇が触れ合っただけで動揺してしまうなんて。

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