隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~


 冷たい秋の風が山梨の盆地を吹き抜け、冬の足音が聞こえてきた。


 昼間は勤務先で働き、夜は祖父の工房で研磨台に向かう。

 充実しているが忙しい。一日の終わりにスマートフォンから聞こえてくる昂輝の声は、蒼乃の冷え切った身体を芯から温めてくれた。


『ごめん、年末は忙しくて、そっちに行かれそうにないかもしれない』


 クリスマスを、二人で過ごそう。

 そう、約束していた。


 受話器の向こうから、小さく息を吐き出す音が聞こえる。

 大きな仕入れがあったと言っていた。

 年末商戦、クリスマスのギフト。宝石業界の書き入れ時だ。顧客の対応で常に張り詰めているのだろう。

 いつもより、声に含まれる疲労の色が濃い。

 そんな彼だが、蒼乃と話している時だけは、張り詰めた糸がふっと緩むような、少し甘えるような響きが混ざり合う。

 それが愛おしくて、蒼乃は胸を締め付けられた。


「ねぇ、私がそっちに行こうか?」


 受話器を握る手に少しだけ力を込め、思い切って提案してみる。

 忙しくて断られるかもしれない。
 そう覚悟したが、思いの外、弾んだ声が返ってきた。


「え、本当? 来てくれるの?」


 パッと明るくなる彼の声が受話器越しに弾ける。まるで宝物を見つけた少年のようなその反応。

 その声に、蒼乃は笑った。





< 10 / 112 >

この作品をシェア

pagetop