隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
冷たい秋の風が山梨の盆地を吹き抜け、冬の足音が聞こえてきた。
昼間は勤務先で働き、夜は祖父の工房で研磨台に向かう。
充実しているが忙しい。一日の終わりにスマートフォンから聞こえてくる昂輝の声は、蒼乃の冷え切った身体を芯から温めてくれた。
『ごめん、年末は忙しくて、そっちに行かれそうにないかもしれない』
クリスマスを、二人で過ごそう。
そう、約束していた。
受話器の向こうから、小さく息を吐き出す音が聞こえる。
大きな仕入れがあったと言っていた。
年末商戦、クリスマスのギフト。宝石業界の書き入れ時だ。顧客の対応で常に張り詰めているのだろう。
いつもより、声に含まれる疲労の色が濃い。
そんな彼だが、蒼乃と話している時だけは、張り詰めた糸がふっと緩むような、少し甘えるような響きが混ざり合う。
それが愛おしくて、蒼乃は胸を締め付けられた。
「ねぇ、私がそっちに行こうか?」
受話器を握る手に少しだけ力を込め、思い切って提案してみる。
忙しくて断られるかもしれない。
そう覚悟したが、思いの外、弾んだ声が返ってきた。
「え、本当? 来てくれるの?」
パッと明るくなる彼の声が受話器越しに弾ける。まるで宝物を見つけた少年のようなその反応。
その声に、蒼乃は笑った。
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