隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
蒼乃が席を立ち、流し台で皿を洗い始めると、昂輝がその背中にそっと近づいてきた。
「俺がやるよ」
「いいから、昂輝は休んでて」
蒼乃が微笑みながら手を動かし続けると、昂輝はしばらくその様子を後ろで見つめていたが、やがて躊躇いながらも声を出した。
「……輝のこと、見てきてもいい?」
「ええ、もちろん」
*
昂輝は足音を忍ばせながら、薄暗い客間のドアを静かに開けた。
広いベッドの中央で、小さな身体が丸くなっている。
近づくと、すうすうと規則的な、心地よい寝息が耳に届いた。
気持ちよさそうに眠っている我が子の姿。それを前にした瞬間、昂輝の胸の奥に、言葉にならないほどの深い安堵が訪れる。
同時に、五年間、この子の傍にいてやれなかったことへの激しい後悔が、渦を巻いて押し寄せた。
昂輝はベッドの脇にそっと腰掛け、輝の小さな寝顔をじっと見つめた。
額に手を伸ばしかけ、自分の手が冷え切っていることに気づいて、慌てて引っ込める。
輝の小さな身体がもぞもぞと動いた。
布団を蹴り上げる。
それから、小さな唇が動く。
無意識だろう。掠れた声が漏れ出た。
「パ、パ……」
昂輝の身体が、凍りついたように硬直する。
耳を疑った。
これまで自分を頑なに拒み、他人として見ようとしていた息子が、夢の中でその存在を呼んでいる。
昂輝は、手のひらを少しこすり合わせてから、輝の小さな手を、壊れ物を扱うようにそっと握りしめる。
昂輝の目から、堪えきれなくなった熱い涙が溢れ、シーツを濡らした。
外の世界がどれほど牙を剥き、会社が危機に瀕しようとも、自分には、この小さな子が自分を呼ぶ声がある。
その確かな温もりが、迷いの中にいた昂輝の心を芯から満たす。
何があっても戦い抜く覚悟を、静かに、呼び起させた。