隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
日付が変わる寸前、自宅マンションの重いドアが、静かに開いた。
リビングから漏れる柔らかな明かりの中に、そっと、昂輝が顔を覗かせる。
「あ、おかえりなさい」
蒼乃は顔を上げると、見つめていたスマートフォンをソファーに置く。
帰ってきた昂輝の顔は、いつもの隙のない鋭さは影を潜め、青白い。額の白いガーゼが痛々しく、目の下には濃い隈が刻まれている。
足取りにも、隠しきれない疲労が滲んでいた。
「ただいま。遅くなってごめん」
「ううん。ごはん、食べる?」
蒼乃がそっと尋ねると、昂輝は驚いたように目を瞬かせた。
「え、いいの?」
「もちろん」
蒼乃はキッチンへ向かう。
さっと温め直した料理をテーブルに運んだ。
湯気とともに香ばしい肉の匂いが広がる。
「わ、ハンバーグだ」
それまでの峻厳な表情が嘘のように、昂輝の顔が子供のようにパッとほころぶ。
その表情の崩れ方は、輝の笑顔に恐ろしいほどそっくりだ。
「夜遅いから、少な目にしたわ。お野菜も取って」
「いただきます。……うん、おいしい」
昂輝は丁寧に箸を動かし、一口ごとに噛み締めるように食べた。
蒼乃の手料理が、彼の張り詰めていた身体の芯をゆっくりと解きほぐしていくのが、その表情の変化から見て取れる。
蒼乃はほっと息を漏らし、出来るだけ明るい声で話す。
「色々準備してくれてありがとう。ネットスーパーって、便利ね」
「いや、本当に、ほおっておきっぱなしで申し訳ない。退屈だろう?」
昂輝は申し訳なさそうに視線を下げた。
自分の都合でこんな警備の厳しい場所に閉じ込める形になっていることが、心苦しくてならないのだろう。
「うーん……輝はね、お外に出られないことが、少し不満みたい」
蒼乃は少し困ったように笑いながら答えた。今日のところは好物のハンバーグで連れたが、さて、明日からはどうしたものだろうか。
苦笑いをしたあと、蒼乃は、慎重に、口を開く。
「……そっちはどう?」
「うん、聴取は問題なく済んだよ。もともとが濡れ衣なんだ。出所は全部示せる。ただ……イメージダウンは避けられない。株価の下落が止まらないのが、痛いところだな」
昂輝は小さくため息をつき、皿を見つめた。