隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
「どちらにせよ、一時的な措置だ。世間に『社内の変革に動いた』という印象を付ける。実質、現場を動かすのはこれまで通り昂輝でいい。ほとぼりが冷めたら元に戻す。……そうだな、二年か三年もすればいいだろう」
否定の言葉を叫びそうになるのを、昂輝はかろうじて踏みとどまった。
御堂ジュエリーを背負うものとして、この提案に無下に反発することは許されない。会社を第一に考えた叔父の現実的な提案に、ただ静かに耐えるしかなかった。
重苦しい沈黙を破ったのは、ベッドの上の父だ。
細くなった手で額を抑え、弱々しく首を振る。
「俺には無理だ。今更こんな身体で社長に戻ったら、対外的にも不安を与えるだろう」
「じゃあ第二の案で行くか?」
敦輝の言葉が、逃れようのない現実として昂輝の肩に重くのしかかる。
自らの無力さに、昂輝は唇が切れるほど強く噛み締めた。
沈み込むような空気の中、叔父が何かに思い至ったように顔を上げる。
「……そう言えば、例のアレ、どうなった?」
「ああ、今、工房に出しているよ。なあ、昂輝」
父の言葉に、昂輝は意識を切り替えるように声を張り上げた。
「はい、しっかり研磨して展示する予定です」
東京ジュエリーショーの展示の話だ。
サファイアの大きな原石を見つけた。もう五年前のことだ。
あの、蒼乃に贈るためのサファイアを見つけた日、同じ鉱脈から出たという巨大な原石も仕入れていた。
おそらく、蒼乃に贈るサファイアはその原石の欠片の一つだ。
社内ではもっぱら『伝説級』と呼ばれている。
どのようにカットし、どう磨くか。
ここ数年極秘に進んでいた話が、ようやく動いていた。
今年の東京ジュエリーショーに展示する御堂ジュエリーの目玉だ。
研磨は、及川に発注している。彼以外、適任者はいない。
「そうか。あの石が展示されれば、御堂ジュエリーの業界内の信用は、取り戻せるだろうが……」
叔父は会社の行く末を案じるように、深くため息をついた。
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