隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
翌日開かれた役員会議。部屋の空気は、凍りついていた。
東京ジュエリーショーへの出展を巡り、重役たちが険しい表情で顔を見合わせる。
「慌てて磨くことはない。来年だっていいじゃないか。これ以上、うちのお抱え職人たちを危険にさらすわけにはいかんだろう」
叔父の敦輝が、会議室に響き渡る声で静かに、しかし断固とした口調で言った。
間違いない。
御堂ジュエリーが狙われているのは確かだ。別の人物へ研磨を発注したとしても、また、その人が狙われる。
「しかしそれでは、御堂ジュエリーの信頼回復は……」
一人の役員が言い淀む。
これ以上の信頼回復など、今の状況では見込めないことは誰もが理解していた。
悪質な噂の拡散、生命線である七井百貨店からの全面撤退の要求、そして工房への強盗襲撃と伝説の研磨師の負傷。
会社を存続させるための良い材料は、今の御堂にはひとつも残されていない。
重苦しい沈黙が広がる中、叔父は昂輝に向き直り、穏やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。秘策がある。なあ、昂輝」
公の場である役員会議で、叔父が自身のことを名前で呼んだのは、昂輝が社長に就任して以来初めてのことだ。
もう『常務と社長』ではない。
叔父にとって自分は、自らの庇護下に置くべき『甥』として扱われている。
昂輝は押し潰されそうな胸の痛みを堪えながら、低く答えるしかなかった。
「……会長と、相談をします」
自らの退任。
その苦渋の決断が、すぐ目の前まで迫っていることを突きつけられていた。
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