隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
 ハザードランプを明滅させた車の助手席で、蒼乃は静かに正面を見つめていた。


 リクライニングされた後部座席のジュニアシートには、泣き疲れて再び眠りに落ちた輝が乗せられている。

 愛息は、今はもう何も知らない夢の中だ。


 カチャリ。

 運転席のドアが開き、冷たい外気とともに昂輝が乗り込んできた。

 彼は近くの自動販売機で買ってきたらしい緑茶のペットボトルを手に持っている。キャップを捻って封を切り、それを静かに蒼乃へと手渡した。

 受け取ったボトルから一口だけすする。

 喉が酷く渇いていたせいで、軽くむせた。


「……何から話そうか」


 昂輝の呟きは、蒼乃に問いかけているというよりも、四方八方に散った自分自身の思考を必死に整理しようとしているように聞こえる。


「一番大事なことから、だな。うん」


 独り言のように小さく頷くと、昂輝は蒼乃の方を向いた。

 その表情には、一切の迷いがない。


「浮気はしていない。今からきちんと説明する。とにかく……誤解だ」


 蒼乃の頭は、急激な疲労と混乱でぼうっとしている。

 彼の言う言葉の並びが、すぐには染み込んでこない。


「……どうして、ここがわかったの? ホテルは?」


 掠れた声でそう尋ねると、一瞬、昂輝は驚いたような顔をする。そして、顔を逸らすことなく蒼乃の瞳を見つめ返した。


「……家に帰った。二人の寝顔だけでも見たいと思って部屋に入ったら、いなかった。すぐに車で出て、保育園と蒼乃のバイト先の質屋に寄ったけど、この時間じゃどっちも閉まっていたし、人の気配はなかった。それで、次にここへきた」


 興奮して正常ではないかもしれない蒼乃の頭でも、一歩一歩の足取りがはっきりと分かるように、彼は細かく、丁寧に説明を重ねてくれる。

 蒼乃は小さく一度、頷いた。
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