隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
会場内は、間もなく迎える一般客の入場に向けて、にわかに慌ただしさと熱気を帯びていた。
きらびやかなドレスやスーツに身を包んだ関係者たちが行き交う中、御堂ジュエリーのスタッフが焦燥をにじませた顔で昂輝に駆け寄ってきた。
「社長、そろそろあのサファイアを開けて展示しませんと、事前のプレス撮影の時間に間に合いません……」
「……ああ、わかっている」
昂輝は、ただひたすらに待っていた。
もう間もなく、蒼乃たちが本物のサファイアを携えてこの場所に現れるはずなのだ。
『今、ホテルの車寄せに着いた』という短いメッセージが蒼乃から届いたのは数分前のことだ。
それなのに、遅い。
不自然な時間の空白に、昂輝の背筋を冷たい汗がゆっくりと伝い落ちていく。
突如、展示ブースの遥か前方、会場の入り口付近が、地鳴りのようなざわめきに包まれた。
誰かが狂ったように叫んでいる。
華やかな美術品に彩られた通路の向こうから、数人の男たちが血相を変えて駆け込んでくるのが見えた。
その先頭を切って、必死に短い足を動かして走ってくる小さな影がある。
輝だ。
衣服を乱し、大粒の涙をボロボロと溢しながら、声を枯らして走っている。
その赤く腫れた小さな瞳が、ブースの中央に立つ昂輝の姿をまっすぐに捉えた。
輝は、胸をかきむしるように、全力で叫び声を上げた。
「たすけて、パパ!」