隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

「いやぁ、これはすごい」
「なんて輝きでしょう」
「一生に一度、お目にかかれるかどうかのサファイアだな」


 御堂ジュエリーの特設展示ブースは、押し寄せる来場者とバイヤーたちで隙間もないほどの盛況ぶりを見せていた。

 四方から覗き込めるガラスケースの中央に据えられた青い宝石を一目見ようと、人々は感嘆の声を漏らし、熱い視線を注いでいる。


「これほどの石を……うん、やはり御堂の目利きと技術は確かだな」
「あなた、私もサファイアが欲しくなったわ」


 周囲から聞こえてくる評価はどれも極めて高い。
 これまでに囁かれていた、根拠のない悪評を覆すには十分すぎるものだった。

 磨き抜かれたサファイアそのものが、傷つきかけていた御堂の信頼を急速に回復させていくのが肌で感じられる。



 あのサファイアは、輝のポケットの奥に隠されていた。

 出発の直前、大人たちが準備のため目を離した一瞬の隙を突き、輝がケースから取り出し、自分のハンカチに包んでしまい込んでいたらしい。


 『大事なものは、一番近くに』


 祖父が山梨で、そう教えたという。

 つまり、あのフルフェイスの強盗たちと蒼乃は、中身が空っぽのケースを命がけで奪い合っていたことになる。

 とんでもない悪戯に心臓が止まる思いだったが、今回ばかりは、その子供ならではの無邪気な機転が最悪の事態を防いだのだと、昂輝も蒼乃も感謝するしかなかった。




「あら、あなた。よく恥ずかしげもなく顔を出せたわね」


 背後から、冷ややかな、しかし妙に耳に触る声が聞こえた。

 振り返ると、豪奢なドレスを纏った七井晶子が、軽蔑を隠そうともしない笑みを浮かべて近づいてくる。

 その視線は、昂輝の傍らに立つ蒼乃へと向けられた。
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