隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

第32話:ぼくのパパ



「皆様、お騒がせして申し訳ありませんでした。いまお話しした通り、今回、突如として御堂ジュエリーに降りかかった疑惑は、七井百貨店の社長令嬢である七井晶子と、私の叔父、御堂敦輝による計画的な犯行でした」


 特設ブースを埋め尽くした大勢の来場客やバイヤーたちに向けて、昂輝の低く通る声が真っ直ぐに響く。


「まずは、身内の卑劣な犯行に気付けなかったことをお詫びいたします」


 昂輝は、深々と頭を下げる。

 その姿と、警察官たちに連行されていく晶子と敦輝の背中。

 野次馬たちはそれらを交互に眺めている。その喧騒を受け、昂輝は頭を上げると、堂々とした体躯で一歩前に出た。


「ニュースにはなっておりませんが、二件の強盗に、幼児の誘拐未遂、脱税、違法取引……。あの二人が共謀した悪事の隠れ蓑に、残念ながら、御堂ジュエリーは利用されてしまいました。しかし……」


 昂輝は一度言葉を区切り、集まった人々の顔をゆっくりと見回した。

 その瞳には、これまでの苦難を乗り越えた者だけが持つ、確かな光が宿っている。


「ご安心ください。後は、警察が適切に処理するでしょう。御堂ジュエリーは今後も、良質で出所の確かな宝石を皆様にお届けすると、お約束いたします」


 昂輝が再度、深く頭を下げると、張り詰めていた会場の空気がふっと緩んだ。

 静寂が訪れたのも束の間、一人の年配の紳士が手を叩き始めたのを皮切りに、ブース全体から波のような拍手が沸き起こった。


「頑張りなさい」
「今度、路面店にお邪魔するわ」


 近くにいた顧客たちが昂輝の元へ歩み寄り、その逞しい肩を叩きながら、次々と温かい言葉をかけていく。

 少し離れた場所からその光景を見つめていた蒼乃は、胸の奥から熱いものが込み上げてくるのを覚えた。

 大勢の人々に囲まれ、信頼を取り戻していく昂輝の背中は、言葉にできないほど大きく、誇らしい。

 彼の誠実さが、この短い時間で確かに人々の心を動かしたのだ。


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