隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
「おう、おかえり」
祖父の声は、いつになく落ち着いていた。
しかし、その双眸からは職人としての生気が消え失せ、どこか全てを諦めたような光が宿っている。
「お祖父ちゃん、返済って......そんなお金、どこから出したの?」
祖父は一瞬言いよどみ、それから、諦めたように声を出した。
「こちらの方に出していただいたよ。工房は、売った。これで、ここにいる職人たちの雇用も、今後の生活も安泰だ」
祖父の口から出た言葉の意味が、すぐには理解できない。
祖父の工房が、なくなってしまった。
何代も続き、祖父が命を懸けて守ってきたこの伝統ある場所が、他人の手に渡ってしまった。
祖父は、共に働いてきた職人たちを路頭に迷わせないために、何より、孫の蒼乃にこれ以上の苦労や借金を背負わせないために、自らの誇りを切り売りして苦渋の決断を下したのだ。
その老いた背中に、果てしない悲哀が滲んでいる。