隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
御堂昂輝は、東京のオフィスへ戻ると凄まじい勢いで書類を片付けた。
ここ二週間、まともに睡眠をとっていない。
目の下には色濃い隈が刻まれ、端正な顔立ちは疲弊しきっている。
それでも、当座の用に蹴りをつけて、どうしてもいかなければいけない場所がある。
悪質な新興ジュエラーが及川工房の借金に目をつけ、卑劣な手段で工房を乗っ取ろうと画策している。
その情報が昴輝の耳に入ったのが、ちょうど二週間前。
山梨の及川といえば、この業界では知らないものはいない。
伝説の研磨師。
それが、及川匠だ。
どんな石でも自在に磨く。
その技術の高さ、細やかさ、感性。どれをとっても右に出るものはいない。磨くのが難しい石も、及川へ持っていけばどうにかしてくれる。
そんな、業界からの信頼を一心に受けた研磨師が、及川匠だ。
通常、カラーストーンを扱う研磨師はカラーストーンのみ、ダイヤモンドを扱う研磨師はダイヤモンドのみを研磨する。
しかし、及川は両刀だ。
その知的探究心と技術の向上を突き詰めた結果、全ての石を極上の宝石へと磨き上げる腕を手に入れた。
彼がその名を宝石界に轟かせたのは、今から四十年前。
海外のジュエラーが、購入したものの、どうにも研磨できない金剛石を、極秘に、山梨に持って来た。
あらゆる著名な研磨師が匙を投げた金剛石。
及川は、それをみごとに磨いた。