隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
昂輝は探偵を雇い、山梨中の工房を探させた。
彼女は研磨師の仕事に誇りを持っていた。辞めるわけがない。きっと、どこかの工房で石を磨いているはずだと信じていた。
しかし、白河蒼乃という名は、どこの名簿にも載っていない。
職人たちの噂話にも上らない。
それでも、昂輝は探した。
高級ホテルのラウンジで商談を終えた昂輝は、一人になると、スーツの内ポケットにそっと手を伸ばす。
指先が触れたのは、小さな小さなベルベットの箱。
取り出し、そっと開く。
中には、最高品質の、深く澄んだ青を持つサファイアの婚約指輪が収められていた。
蒼乃の誕生石だ。
ドイツのミネラルショーで見つけ、その美しさにほれ込んだ。
カシミール産。深いコーンフラワーブルー。
光を当て、原石を見た時は驚いた。その高い彩度と透明度は一級品だと確信した。磨けば、一層輝く。
期待を込めて研磨させた。
すると、望んだ以上の、美しいサファイアが現れた。内包物や傷が、全くと言って良いほどない。
こんなサファイアは見たことがなかった。
正確に、慎重にカットさせる。
大切な、人生を左右する石だ。
美しい照り。
どの角度から見ても光を取り入れ、光を放つ、素晴らしい宝石になった。その美しさは、まるで、宝石を研磨する時の、蒼乃の真剣な瞳のようだった。
及川工房の買収が片付いたら、蒼乃に結婚を申し込もうと思っていた。
持ち主を失った指輪は昂輝の心を縛りつけ、また、強く奮い立たせる。
消えた恋人への後悔は、一日たりとも昂輝の心を離れたことはない。
「……蒼乃」
昂輝は、愛する人の名を、口の中でそっと呼んだ。
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