隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
夕方、西の空が茜色に染まる頃、蒼乃は一日の仕事を終えて保育園の門をくぐる。
園内からは、子供たちの賑やかな笑い声や、おもちゃがぶつかり合う小気味よい音が溢れた。
廊下を渡り、輝のいる教室の覗き窓から中を伺うと、輝が熱心に保育士と話し込んでいる姿が目に入る。
教室の隅にある自然物コーナーの前に、輝はしゃがみ込んでいた。
「先生これなあに?」
「これは松ぼっくりだね」
「これ、石?」
「ははは、石じゃなくてよ。植物だ」
そう言って輝の頭を優しく撫でたのは、保育士の日向陽介だ。
蒼乃の高校時代の同級生であり、気心の知れた友人の一人でもある。
0歳児の輝を抱えてこの園に飛び込んだ日、保育士として働いていた陽介と再会した。
陽介は蒼乃の複雑な事情を深く詮索することはせず、ただ「大変な時は頼れよ」と言ってくれた。
時折、保育園外でも輝の面倒をみてくれ、また、重い買い出しを手伝ってくれたりと、陰ながら支えてきてくれている。
「輝、ただいま」
「あ、ママだ!」
蒼乃の声に気づいた輝が、弾かれたように駆け寄ってきて足にしがみつく。
朝ぐずっていたことなど忘れてしまったかのような笑顔だ。
「ママみて、まつぼっくい!」
少し舌足らずな発音が愛らしい。
蒼乃は、息子の柔らかい髪をなでた。