隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
重い足取りで教室へ戻ると、日向陽介が、そっと輝の荷物を持って付き添ってくれた。
園庭を通り抜け、門のあたりまでやって来た。
輝は、植え込みにしゃがみ込んで石を見ている。
陽介は周囲に人がいないことを確かめてから、静かに真相を切り出した。
「さっきは園長も相手の親の手前、詳しくは言えなかったみたいだけどさ。……秀明くん、日頃から輝くんに『お前の家にはパパがいない』って、からかってたんだよ」
蒼乃は息を呑んだ。
「輝くん、蒼乃を悲しませたくなくて、ずっと黙って耐えてたんだ。でも今日、ついに我慢できなくなっちゃったみたいで」
陽介の言葉に、蒼乃は足がすくむのを感じた。
いつも明るく笑っていた四歳の息子が、そんな重い荷物をその小さな背中に背負っていたなんて。
「……教えてくれて、ありがとう」
小さく礼をいうと、蒼乃は、輝を呼び寄せた。
「日向先生が、病院に連れて行ってくれたの?」
帰り道。
いつもの道を、二人で歩きながら、蒼乃は大人しい息子に尋ねた。
母親の手をぎゅっと握っていた輝が、小さな口を開いた。
「うん。おんぶしてくれた」
「良かったね」
蒼乃はしゃがみ込み、輝の痛々しい包帯のすぐ下、柔らかい前髪を愛おしそうに何度も撫でた。
「痛い?」
「ううん! いたくないよ、ぼくおとこの子だもん」
輝はにっこり笑いながら言った。
どれだけ、頑張らせてしまっているのだろうか。
自分のせいで、この小さな手にどれだけの我慢を強いてしまっているのだろう。
堪えていた涙が視界を滲ませ、今にも溢れそうになる。
それを隠すように、蒼乃は無理に口角を上げて、精一杯の笑顔を作った。