隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
いくつかのブースを視察し終え、御堂昂輝は会場を通り抜ける。
宝石の数は限られている。
新品だけにこだわる意味などない。中古品でも、いや、中古品の方こそ、質の良いものに巡り合えるものだ。
数年、東京で仕事に熱中している間に、そのことに気付いた。
定期的に質流れ品をチェックするようにしていたが、今日は、ここ一番の掘り出し物があった。
浮足立つ足音を気取られぬよう、つとめて静かに、前を向く。
いくつかのざわめき。
自分に向けられる熱い視線。
それらを感じてはいたが、いつものことだ。気にする意味はない。
昂輝は一度も振り返ることはなく、周囲の喧騒を無視して出口へと歩を進めていた。
彼の固く握られた拳。
それが、戦慄くように震える。
ほんの一瞬、視界の端をよぎった、ある女性の姿。
地味な眼鏡をかけ、マスクで顔を覆い隠した店員。その彼女が、ショーケースの中の石を扱う指先の手つき。そして横顔。
五年間、寝ても覚めても頭に浮かんだ、たった一人の女性。
白河蒼乃が、いた。
「見つけた」
低く掠れた声が、喧噪の中に小さくこぼれ落ち、消えた。