隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
「じゃあ、乾杯」
夕闇が迫る工房の裏手は、昼間の熱気が嘘のように、静かな空気が流れていた。
研磨体験に来ていた彼は、あれから三種類の石を削り、イベントが終わる時刻まで研磨台の前に座り続けた。
イベントの終了を告げると、そこで初めて、長い時間が経っていたことに気づいたようだった。
慌てて飛び上がった姿に、つい、笑いがこぼれる。
よほど夢中になっていたのだろう。恥ずかしげに「朝から居座って申し訳ない」と謝る彼は、少し可愛く見えた。
彼は、長時間、研磨台を独占したお詫びにと、イベントの片付けを率先して手伝ってくれた。
全ての道具をしまい終えると、蒼乃は、工房の古びた冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出す。
「車ですよね。ノンアルでよければ、お出しします」
彼は嬉しそうに微笑んだ。