隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
保育園を出て、近くのスーパーで買い物を済ませた頃には、街はすっかりオレンジ色が消え、薄暗さに包まれ始めた。
特売のひき肉を手に入れ、今夜のメニューが決まったので、輝の足取りは一層軽い。
蒼乃の手をしっかりと握り、小さな腕をぶんぶんと前後に振っている。
「ママ、きょうのごはん、はんばーぐね!」
「そう。輝の大好きなハンバーグよ」
好物のメニューを告げてから、ずっとご飯の話ばかりだ。
弾むような息子の声に、先ほどまでの沈んだ気持ちが嘘のように晴れていく。
この小さな手を守ることこそが、自分がいま、すべきことだ。
アパートへと向かう道。
河川敷に沿った広い道を、息子と二人、手を繋いで歩く。
ふと、顔を前方へ向ける。
道の角から、不穏な空気を感じる。
嫌な予感が皮膚を突き刺し、蒼乃はぴたりと足を止めた。立ち止まって、じっと待つ。
曲がり角から、一人の男が現れた。
昂輝だ。
その切れ長の瞳に宿る、逃げ場のない熱。
『氷の宝石商』と呼ばれる彼の冷ややかな佇まいと、過去の記憶が重なり合い、肺の空気がすべて引き抜かれたように呼吸が止まる。
蒼乃は半ば本能的に、繋いでいた輝の小さな身体を引っ張り、自分の背後へと隠す。
「……やっと、捕まえた。俺から逃げ切れると思ったか?」
昂輝の声は静かだ。
しかし、その芯は細かく震えているようにも聞こえる。
彼は驚くほどにやつれた表情で、切なげな、何かに縋るような目を蒼乃に向けてくる。
「何か、言ってくれ、蒼乃」
その響きにかすかに含まれる、後悔の色を蒼乃の耳は確かに捉えた。
出会った頃。
石を愛し、共に語った彼の面影が、今の彼の歪んだ表情の裏にかすかに滲んでいる。
やっぱり、自分の知っている、昂輝なのだろうか?