隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~

 だが、怖い。



 背後にいる我が子へ向けられるかもしれない視線への恐れが、蒼乃の身体を完全に支配していた。

 唇が戦慄き、言葉にならない。



 昂輝の長い足が、ゆっくりとこちらへ踏み出された。

 昨日、拒絶されたことに焦りを募らせているのか、彼の大きな手が、蒼乃の肩へと伸ばされる。



 びくりと、身がすくむ。

 指先が触れる。



 その時、蒼乃の背後に隠れていた輝が、弾かれたように前に飛び出した。


 小さな両手を精一杯に広げ、昂輝の行く手を阻むようにして、その小さな身体で立ちはだかる。


「おじちゃん、めっ!」


 幼いながらも毅然とした声が、薄暗い道に響く。



 昂輝の動きが、止まった。


 伸ばしかけた彼の手が、空中で不自然に浮かぶ。

 昂輝の視線が、足元の小さな少年に注がれた。

 輝は怯むことなく、昂輝を真っ直ぐに見上げている。

 昂輝をそのまま小さくしたような顔。
 昂輝と瓜二つの、少し灰色がかった瞳が、そこにはあった。


 
 昂輝の顔から、みるみるうちに血の気が引いていくのが見て取れる。

 時が止まったように硬直した昂輝の額から、一筋の汗が流れ落ちた。


 蒼乃は震える腕で輝の身体を引き寄せると、強引に抱き上げた。


「とにかく、あなたとはもう何の関係もありませんから。お引き取りください」


 早口でそれだけを告げる。蒼乃は一度も振り返ることなく地を蹴った。



 脇目も振らずに、暗い夜道を自宅アパートへと全力で走り去る。

 背後で、呆然と立ち尽くす昂輝の気配が、遠ざかる自分の足音と共に消えていった。






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