隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
バタンっ。
ドアを閉め、内鍵を何度も確認するように回す。
チェーンを掛け、手のひらで抑える。
電気もつけず、暗い玄関先で、蒼乃は輝をしっかりと抱きしめたまま、ずるずると床へ崩れ落ちた。
緊張から解放された途端、目元から熱いものが溢れ出し、ポタポタと玄関の板目を濡らしていく。涙が止まらない。
……今更、どうして。
どうして今になって私の前に現れるのか。
あの絶望の日。必死で生き抜いてきた私たちの生活を、なぜ今になって掻き乱そうとするのか。
声にならない叫びが胸の中で渦巻く。
「……ママ、いたいいたいなの?」
腕の中でじっとしていた輝が、心配そうに顔を覗かせてきた。
小さな、温かい手のひらが、蒼乃の濡れた頬をそっとなぞる。
息子の無垢な優しさが、蒼乃の冷え切った心にじわりと染み込んでいく。
この子を失うわけにはいかない。
蒼乃は手の甲で手早く涙を拭うと、きつく強張っていた顔に、無理やりいつもの微笑みを浮かべた。
「大丈夫よ。……美味しいハンバーグ、つくろうね」
立ち上がり、ようやく、明かりを灯す。
守らなければならない。この子の笑顔だけは、何があってもあの男に奪わせない。
小さな背中を見つめながら、蒼乃は心の中で強く、強く誓う。
しかし蒼乃の脳裏には、あの顔が……去り際に見た昂輝の、あの絶望に満ちた瞳と、血の気の引いた白い顔が、まるで解けない呪いのように、張り付いていた。