隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~



「疲れたぁ……」


 しんと静まり返ったアパートの一室で、蒼乃は小さな机に突っ伏していた。


 隣の和室からは、小さな寝息が聞こえている。

 家に帰ってからも興奮が収まらなかった輝は、ぐずりが収まらず、随分と長い時間泣いて、そのまま眠ってしまった。

 明日も仕事だ。寝なければ。

 そう頭では分かっていても、疲れ果て泥のように重い身体に反するように、意識だけが冴え渡って身動きが取れない。



 頭をよぎるのは、陽介から真っ直ぐに向けられたプロポーズの言葉だ。

 彼と結婚すれば、輝はもう『パパがいない』といじめられることもなくなるだろう。


 陽介のことは好きだ。高校生の頃から気の合う友人だと思っていたし、再会したときも嬉しかった。

 昂輝に対して抱いたような、身を焦がすような激しい激情はない。

 しかし、穏やかな波に揺られるような暖かさを感じるのは確かだ。結婚とは、そういうものなのかもしれない。

 家族になるための温かな幸福がそこにあることが、一番良いのかもしれない。そんな気がする。



「……う、ん……」


 和室の方から、輝の声が聞こえる。目を覚ましたのだろうか?

 
 いや、違う。


 蒼乃はハッとして立ち上がり、急いで布団の横へ這い寄る。

 苦しそうな声だ。

 輝の額にそっと触れた瞬間、指先から飛び込んできた尋常ではない熱さに、息が止まった。

 急いで体温計を脇に差し込む。電子音が鳴り、暗闇のなかで浮かび上がった数値は、四十度を超えていた。


「……う、そ」


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