隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
第13話:真実
「今、点滴していますからね」
白髪交じりの医師の温厚な声が、静かな処置室に響いた。
小児科医院の一室。
ベッドと、傍に置かれた点滴。
白河蒼乃はボロボロに泣き濡れた顔を隠そうともせず、ぼうっと、年代物の椅子に腰かけた。
ベッドの上では、輝が小さな腕に管を繋がれ、眠っていた。苦しげだった表情は少しだけ和らいでいる。
興奮による発熱と、脱水症状だった。
保育園から家まで泣き通し、帰宅後もぐずり続け、そのまま泣き疲れて眠ってしまった。食事も取れていないし、言われてみれば、水分も取れていない。
親としての、管理不足だ。
「輝くん、すぐ元気になりますから。お母さんもそんなに落ち込まないで」
「……ありがとうございます」
掠れて消え入りそうな声しか出ない。
医師が退室していく足音を、蒼乃の耳が、遠い世界の出来事のように捉える。
見上げていた視線を落とすと、自分の隣には、共に夜道を駆け抜けた御堂昂輝が静かに座っているのが見えた。
磨かれていた革靴には、少し、アスファルトにこすれたらしい跡が見える。
汗をかいた彼は上着を脱ぎ、ネクタイを緩めていた。額ににじんだ汗はうっすらと引きはじめ、乱れた呼吸は、すでに整えられている。
アパートの前で叫んだ瞬間、昂輝は迷うことなく、ぐったりとした輝を蒼乃の腕から受け取った。
そのまま蒼乃の先導に従い、必死に走ってくれた。
インターホンを何度も押し医師が出てくると、蒼乃が説明するよりも先に『子供が大変なんだ。早く診てほしい』と口早に話した。
必死な声色。
あの音が、今も蒼乃の心を微かに揺さぶり続けている。