隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~





「ママ、きょうおやすみのひ?」


 不意に布団が擦れる音がして、輝がむくりと身体を起こした。

 まだ少し眠たそうに細められた輝の顔立ち。
 半分閉じられたまぶた。
 そしてその下から覗く少し灰色がかった瞳。

 そのすべてが、昂輝の面影をそのまま写し取ったかのように生き写しである事実に、蒼乃の心は千切れそうになる。

 蒼乃は己の心に蓋をするように、小さな声を出した。


「そう、保育園はお休み。ママもお仕事お休み」
「やったー! ね、ママあそぼ。ぼく、こうえんいきたい」


 布団の上で小さな手を広げて喜ぶ輝は、昨夜四十度の熱を出した子とは思えないほど無邪気だった。

 その姿がかえって、蒼乃の胸の奥にある罪の意識を、鮮明に浮き彫りにしていく。


「今日は、お出かけはしません。お熱があるから、寝てようね」
「ええー。ぼく元気なのにぃ」


 下がってきたとはいえ、まだ三十七度半ばだ。薬の効果で熱が下がっているだけとも言える。

 不満げに頬を膨らませる息子の頭を撫でながら、蒼乃は抗いようのない血の重さを、その小さな背中にこれでもかと見せつけられているような心地がしていた。


 口では元気そうなことを言っていても、体はダメージを負っている。

 添い寝をしてやると、間もなく、輝の目が、とろとろとまどろみ始めた。


「ねえ、ママ」


 ぽつりと輝が呟く。


「なあに?」


 入眠しそうな気配を邪魔しないトーンで、静かに、蒼乃が返事をする。


「ぼくにも、パパ、いるよね?」


 どきりと、心臓が一つ跳ねる。

 トントンと、あやすように輝の背を叩く手を緩めないよう気をつけながら、蒼乃はあいまいに返事をする。


「……そうねぇ」
「ゾウさん……ゾウさんにもパパいたの。だから、ぼくにも……パパ、いる……」


 だんだんと、言葉が切れ、輝が眠りにつく。

 規則正しい寝息が聞こえて来てからも、しばらくの間、蒼乃は輝の背を撫で続けていた。








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