隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
及川工房の休憩室は、使い込まれた畳の匂いと、微かなお茶の香りに満ちていた。
大人三人と子供一人が、大きな座卓を囲んで向き合う。
祖父は、未だに肩を怒らせている輝をひょいと自分の膝の上に乗せると、大きな手のひらでその背中をぽんぽんと叩いた。
そうして、あやすようにして目元を和らげる。
「おうおう、タコさんじゃな」
祖父が輝の膨らんだ頬を指先でつつくと、輝は祖父の胸に顔を埋めながら、なおも座卓の向こう側に座る昂輝を指さした。
「ひいじい、あのおじちゃんね、ママをいじめてたんだよ」
「ほお、そうか。じゃあ謝らないといけないな。ほれ御堂さん、蒼乃に謝りなさい」
祖父の容赦のない言葉に、昂輝の身体がびくりと跳ねる。
「え、あ、あの……」
普段は、ビジネスの場で多くの人間を動かし、峻厳な佇まいで交渉の席に臨んでいるであろう男が、今は見る影もなくうろたえている。
慌てた様子を見せた後、昂輝は座卓を避けると、蒼乃を向いて両手を突き、深く頭を下げた。
「改めて、いろいろと申し訳なかったです。謝って済む問題ではないけれど……本当に、ごめん」
あまりにも素直な謝罪の姿に、蒼乃は面食らって目を丸くした。
呆気にとられる蒼乃の耳に、再び祖父の乾いた声が届いた。
「ほれ、蒼乃も謝りなさい」
「わ、私も……?」
「喧嘩両成敗じゃ」
祖父は当然と言わんばかりに鼻を鳴らす。
蒼乃はたじろぎ、口を開けたまま、もごもごと言い訳を考えた。
だが、頭を上げた昂輝の真剣な眼差しと真っ正面からぶつかると、それらの言葉が、喉の奥へと引っ込んでしまう。
小細工や策略を感じさせない、ただ純粋な申し訳なさと、蒼乃への強い想いだけが揺れる、昂輝の瞳。
この工房がどれほど大切に守られてきたかを知った今、自分たちの関係が複雑に絡み尽くしてしまったことの責任を、すべて彼に押し付けることなど、できるはずもない。
祖父の荒っぽい、けれどすべてを見抜いたような優しさに背中を押されるようにして、蒼乃の胸から頑固なトゲが一本、するりと抜けていく。
蒼乃は小さく息を吸い、膝の上で握りしめていた拳を緩めた。
「……私も、いろいろと勘違いをしていたみたいで、ごめんなさい」
ぽつりと呟いた言葉に、昂輝の瞳が微かに潤んだように見えた。
彼は大きく目を見開くと、深く頷いた。
その様子を満足そうに見届けた祖父は、輝の頭を撫でながら、何でもないことのように立ち上がる。
「仲直りもできたことだ。御堂さん、せっかくだから夕飯を食べて行ったらいい。ほれ蒼乃、輝くんはじいちゃんが見てるから、買い出しに行ってこい」