隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
「俺は今からでも、蒼乃とやり直したいと思っている。五年の時を埋めたいし、これからは蒼乃のこともひかるくんの事も、俺が守りたいと思っている。でも蒼乃は……」


 昂輝はそこで言葉を詰まらせ、喉を激しく上下させた。

 その瞳に、焦燥と、ある一つの恐れが映る。


「蒼乃は、あの男の方がいいか?」


 その問いに、蒼乃は濡れた目を見開き、驚いたように瞬きをした。

 陽介だ。

 昂輝が陽介に対して、そこまでの恐れと嫉妬を抱いていたことに初めて気づかされた。

 どう話すべきか、一瞬迷って、それから、蒼乃は口を開いた。
 包み隠さず、話すのだ。


「陽介は、高校の同級生だったの。輝の保育園の先生で、色々助けてくれて、プロポーズもしてくれた。だけど……お断りしたよ。私の中では、ただの友達だもの」


 昂輝の瞳の奥に、暗闇から救い出されたような、深い、激しい熱が宿る。

 彼の手のひらに力がこもり、蒼乃の手を強く握りしめた。


「……蒼乃、抱きしめてもいい?」


 低く震える声に、蒼乃は小さく、けれど確かに頷いた。

 昂輝の手が、指先から腕を伝い、ゆっくりと蒼乃の背中に回る。蒼乃の身体を強く引き寄せた。

 骨が軋みそうなほどの腕の強さ。耳元で乱れる熱い呼吸。そして激しく脈打つ鼓動。
 そのすべてから、彼の安堵も、焦燥も、狂おしいほどの後悔と喜びが、言葉にならずに伝わってくる。

 言い表しようのない熱に包まれた抱擁の中で、蒼乃は満たされた心地で、その顔を彼の胸にうずめた。


「たくさん傷付けてごめん。俺に、もう一度チャンスをくれ。一生かけて償わせてほしい」


 昂輝の熱い吐息が、耳元で何度も繰り返される。

 蒼乃は、昂輝の広い胸の温もりにすっぽりと包まれながら、視界が再び熱いもので覆われるのを感じていた。



 アパートの一室で、輝を抱きしめて孤独に耐えていた夜も。

 周囲の目を恐れ、正体を隠しながらひっそりと生きて行こうとした日々も。

 心のどこかでは、ずっとこの温もりを求めていたのだと、彼の心臓の確かな鼓動に触れて初めて悟った。

 自分は、ずっとこの場所へ還りたかったのだ。



 二人の止まっていた時間が、静かに、確実に動き始める。

 五年ぶりの熱を己の肌に刻みつけるように、蒼乃はゆっくりと、昂輝のシャツの背中に腕を回した。

 その背中に、そっと指先を沈めるように。
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