隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
「泊まって行けば良いのにのう」
「お祖父ちゃん、御堂さんは忙しいのよ」
東京へ戻るという昂輝を見送るため、蒼乃は輝の手を引いて外へ出た。
夜の風は冷たい。
砂利道の先に停まったセダンの方へゆっくりと歩く。
輝は、まだ昂輝への警戒を完全には解いていない。蒼乃の足の間に隠れるようにして、昂輝が近づいてくると、ぷいと顔を背けてしまう。
「いろいろと、ありがとうございました」
昂輝は祖父に向かって深く頭を下げた。
祖父は頷く。
「ほら輝、おじちゃんにバイバイは?」
「やだっ」
蒼乃が促すが、輝は蒼乃の手を振り払った。
「ぼく、ひいじいのピッカピカの石みるんだもん!」
手に持っていた袋を落とすが、気にすることなく、輝は駆けていく。
パタパタと遠ざかる足音を聞きながら、昂輝は寂しげに、けれど理解を示すように微笑んだ。
「今日は、本当にお世話になりました」
「うん」
祖父は短く応じると、昂輝の肩を大きな手で一回、力強く叩いた。それだけで、男同士の信頼は十分に伝わったらしい。
「ほぉれ輝くん、大事な石を忘れとるぞ」
祖父は、昼間のうちに輝が拾い集めた石の詰まった袋を拾い、工房へと戻った。
「あとで、輝が寝た後にお祖父ちゃんに説明しておくね」
蒼乃がそう言うと、昂輝は微笑んだ。
「ああ。でも、だいたい分かっていらっしゃる顔をされていたけれど」
再び二人きりになると、昂輝は一歩、蒼乃の近くへと寄る。夜の静寂の中で、お互いの体温が伝わってくるような近さだ。
昂輝がそっと蒼乃の手を取り、指先を絡める。
その手の温もりに、蒼乃の胸が小さく高鳴った。
「蒼乃はいつ、東京へ?」
「明後日には帰るつもり」
「そう。じゃあ、連絡する」
昂輝の言葉に頷きながら、蒼乃は深く息を吸い込んだ。
買い出し途中で話した互いの気持ち、そして祖父の前での彼の姿。自分の心は、もう決まっている。